
「太巻き寿司」といえば、運動会やお花見のお弁当の定番として非常にポピュラーなもの。
ところが、南房総ではこの「太巻き寿司」が郷土料理として有名なのです。
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南房総の「太巻き寿司」
出典:南房総市
南房総の郷土料理としての太巻き寿司は、「太巻き祭り寿司」、「房総巻」、「房総太巻き寿司」などとして知られています。
特徴は何と言っても華やかさ。
通常の太巻き寿司は断面の形にはほとんど気を使いませんが、南房総の太巻き寿司は、花や蝶々などをモチーフにした、色鮮やかな断面が特徴です。
南房総の太巻き寿司は冠婚葬祭や年中行事の定番料理。
ルーツは「葬式に配られた芋がらを煮付けてそれを芯にして握り飯を作ったこと」、「紀州の漁師がイワシを追って房総半島を訪れたときに持っていためはりずし」など諸説ありますが、定かではありません。
しかし南房総では良質なお米がとれたことや、漁業を中心に発達したことで人と人の結びつきが強かったことなどが、大勢で集まったときに食べやすい「太巻き寿司」が発達した理由ではないかと考えられています。
かつては、地域で重要な職にある男性が太巻き寿司を作り、振舞っていたそうですが、時代が移り、作り手が女性中心になったことで一気に華やかさが増したと言われています。
太巻き寿司の具材
出典:南房総市
太巻き寿司でなにより大切なのは、断面の美しさ。
そのため、色のきれいな卵や桜でんぶなどは欠かせない存在です。
これらをまず細巻きにして、太巻きの中に模様として巻いていきます。
さらに外側に使われるのは卵や高菜。
これは外側に黒い海苔を巻くと地味になってしまうからと言われていますが、太巻き寿司が作られるようになった江戸時代には、海苔は高価な上、なかなか手に入らなかったため、高菜で代用された名残という説もあります。
ただし、現在では緑の色がカラフルだということから、海苔よりも高菜が好まれているとか。
また、同じように色味が美しく使いやすいということから、かんぴょうで巻かれることもあるそうです。
使用される寿司飯にも、南房総の太巻き寿司らしさがあります。
それは通常のものよりも甘めに作るということ。
これはおもてなし料理として、当時は貴重だった砂糖をたくさん使用してお客をもてなしたいという気持ちのほかに、砂糖の働きでご飯が固くなるのを防ぎ、さらに腐りにくくするという意味合いもあったようです。
最近では、それほど甘く作られることは少なくなってきましたが、甘さたっぷりの太巻き寿司こそが、本物のなのです。
今に伝わる食文化
現在では、「太巻き寿司コンテスト」が行われたり、各道の駅などではそれぞれが工夫を凝らした絵柄の太巻き寿司が用意されるほか、体験教室なども行われて、すっかり名物として定着した太巻き寿司。
かつては伝統が途絶えかけたこともあるそう。
それでも現在までその伝統や技術が受け継がれているのは、地元の人たちの郷土料理に対する愛と努力があったからこそ。
「太巻き寿司」を食べる機会があれば、先人の努力に対する感謝も思い浮かべたいものですね。
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