館山のおまつりに欠かせない「御船歌」の妙味とは?

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お祭りに欠かせないものと言えば地域に伝わる歌や囃子(はやし)、踊りです。

館山でもそれは同じこと。

他の地域と同様に、館山にも独特の歌と囃子、踊りが伝わっています。

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館山の御船歌

出典:南房総花海街道

館山のお祭りのときに歌われる歌の代表的なものとしては「御船歌」があげられます。

「御船歌」というと、船頭が船を漕ぐときや、網を引くときの労働歌と言ったものを思い浮かべますが、館山の「御船歌」はもっと特別な存在。

祭礼の際の、御船歌は、「御船山車」が出祭するときに歌われる歌です。

「御船山車」というのは将軍や大名が乗る「御座船」の形を模した山車のことで、館山のお祭り独自の存在。

そんな「御船山車」のBGMといえる「御船歌」は、もともとは新しい船が初めて海に入るときや、将軍や大名が出港するときに歌われたものでした。

幕府や諸藩では「御船歌」を専門に歌う人たちが存在するほど重要視されたもの。

同時にきわめて縁起のいいものともされ、それが庶民にも伝わって、祭礼のときにも歌われるようになりました。

「御船歌」は明治維新に入って幕藩体制が崩壊すると、将軍や大名家では歌われることはなくなりましたが、しかし庶民の祭りにはしっかりと根付いて今に受け継がれています。

現在、館山でもっとも有名なのは「柏崎の御船歌」と「新井の御船歌」です。

これらはどちらも館山市の無形民俗文化財として指定されています。

また、相浜でも近年まで歌われていて、かつては船形地区浜三町にも御船歌があったと言われています。

柏崎の御船歌は国司神社のもともとの祭礼日である1月16日と8月の1日から2日の祭礼で披露されます。

まず一人が歌を歌い、それに続いて他の歌方(うたいかた)が一斉に歌うという形式で、その昔、「御船歌」を歌う役割は非常に格式が高く、歌うときには裃を身につけることというのが通例となっていたそうです。

また柏崎の祭礼は千八百年代の初めのころにはすでに行われていたという文献も残っていることから、このことからも、二百年近い歴史を持っているということがわかります。

新井の御船歌は現在は二月下旬の歌い初めと、初月1日の館山神社の祭礼で演じられます。

以前は諏訪神社の祭礼で演じられていましたが、大正12年の関東大震災で社殿が倒壊。

それ以後、諏訪神社が館山神社に合祀されることとなり、現在では館山神社の祭礼で演じられるようになりました。

そんな御船歌ですが、実は昭和30年代には後継者がなく、伝承が途絶えかけたこともありましたが、昭和40年代になると保存会が作られて、今でも歌い継がれています。

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雨ごいにルーツを持つ「かっこ舞」

安房の各地で祭礼の際に踊られる踊りの中には「かっこ舞」と呼ばれるものがあります。

「かっこ舞」は、三匹の獅子の扮装で舞う踊りで、「かっこ」というのは、獅子が腰に付けた太鼓のことです。

この「かっこ」を鳴らしながら三匹の獅子が踊りを奉納するのが「かっこ舞」です。

「かっこ舞」が有名なのは、神余の日吉神社。神余では200年以上の歴史を誇る伝統芸能としても伝わってきました。

また「かっこ舞」に欠かせないのは、三匹の獅子と五色の色紙を垂らした花笠をかぶった女性。

この色紙は「ささら」と呼ばれる雨を表現したもので、このささらと獅子の「かっこ」によって雨を降らせて、作物がよく実るようにという神様に奉納されるための踊りです。

この「かっこ舞」も後継者不足によって伝承が途絶えかけたこともありましたが、昭和40年代に復活、現在では館山を代表する祭りの踊りとして知られるようになりました。

「かっこ舞」は神余が有名ですが、それ以外にも青柳、見物の海南刀切神社や濱田の船越鉈切神社などで行われています。

館山の祭り囃子(はやし)

館山の祭りの囃子には「ぴっとこ」「さんぎり」「かまくら」などと呼ばれる種類があります。

ただし、これは館山でほぼ共通しているようで、用いられるのは大胴と呼ばれる大太鼓と、しめ太鼓と呼ばれる小太鼓、そして笛と鉦の組み合わせというのもほとんど同じ。

ちなみに「ぴっとこ」というのは「ひょっとこ」のことです。

なぜか館山のお祭りにはときどき「ひょっとこ」が重要な場所に顔を出します。

踊りの中では「空気が読めずに邪魔をする」という役割でひょっとこが登場することもあり、不思議な存在感を示しています。

また上町・諏訪神社の引き回しには、その名もずばり「ぴっとこ踊り」が踊られます。

これはひょっとこのお面をかぶって雨ごいを行う神事の名残を受け継いでいるものとされ、昔から使われていたひょっとこのユーモラスの面や、ひょっとこを演じる踊り手が着る半纏(はんてん)がいまでも残っているとか。

なぜ「ひょっとこ」なのかという由来は不明ですが、時にあらわれるひょっとこは軽妙なしぐさが今でも観客に人気で、これを踊るにはなかなかの年季が必要だといいます。

知れば知るほど奥の深い館山のお祭り。

見るたびに新しい発見と出会えそうですね。

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