館山の祭りの起源 それは神事から住民への移り変わりだった

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館山は全国的に見てもお祭りの非常に盛んな場所です。

館山市内で行われるお祭りは約八十以上と言われ、7月から8月にかけては、各地でお祭りが行われます。

館山のお祭りのスケジュールを見れば、祭りがまったく行われない時期のほうが短いほどです。

それでは館山のお祭りにはどのような起源があるのでしょうか。

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日本のお祭りの起源

館山に限らず、日本のお祭りの起源と言われているのは、「天岩戸」の故事です。

これは「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」が、弟である「須佐之男命(すさのおのみこと)」の乱暴に怒り、岩戸に隠れてしまったことで太陽の光が消えてしまい、国中が暗闇に包まれたという有名な神話。

そのとき、天照大御神を岩戸から引き出すために他の神々が思いついたのは、岩戸の前で宴を行うことでした。

そこで「アメノウズメ」という女神が踊りを披露、そのにぎやかさが気になった天照大御神が岩戸のすき間から顔を出したところを力自慢の神が引き出すことで再び光が戻ったという伝説です。

これが日本で最初の「お祭り」だという説があります。

ちなみに岩戸の前で踊りを踊った女神「アメノウズメ」は、別の名前を天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと)といい、この神様は洲崎神社のご祭神でもあります。

館山に祭りの風土が根付いているのはこういったことも理由かもしれません。

神事から発展したお祭り

天照大御神の故事からもわかるように、お祭りは本来は神様と非常に密接な関係があるものでした。

昔は現代とは違い、神様の存在がずっと身近で、また神様に対する尊敬の念も非常に深いものがありました。

そのときに生まれた神様のためのお祭りが現代に引き継がれているものも少なくありません。

例えば館山地区が合同で行っている「館山地区合同祭礼」はその代表的なものです。

「館山地区合同祭礼」は、もともと別々に行われていた館山の各地区の祭礼がひとつにまとまったもので、毎年8月の1日から2日にかけて盛大に行われます。

これもそれぞれの地区の人々が、地域にお祀りしちる神様のために行われていたものです。

かつて、それぞれの地区に住んでいる住人は商業が発達した現代のように別々の職業を営むことは少なく、農業なら農業、漁業なら漁業とほぼ地区の全員が同じ仕事を営んでいました。

農業や漁業は天候によって大きく左右されるもの。

そのため、神様にきちんと祈りを捧げ、感謝を示すことが重要だと考えられていました。

また、全員が同じ仕事に携わっているということは、地区の団結の強さが収穫に大きく関わってくるということでもあります。

地区の全員が総出で関わるお祭りは、地区の住民の結束を固めるには最適な存在。

神に感謝を捧げながら、地域の絆を確認するお祭りは、地域社会にとって必要不可欠なものだったのです。

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政治から発展したお祭り

お祭りはもともと神様のものですが、それが政治と結びつくことは珍しくありませんでした。

かつて神様を祀る「祭祀」は政治の一部門で、きちんと祭祀を行い、その結果、神様のご加護を得るということが政治に求められた役割でもありました。

また、当時の支配者はお祭りを通じて自分の力を示す必要もありました。

そういった理由から開催される祭りも多く、館山の場合には「安房国司祭り」(やわたんまち)がそれにあたります。

「やわたんまち」は「八幡神社のお祭り」「八幡の祭り」がなまった呼び方ですが、このお祭りが「国司祭り」と呼ばれるのは、安房の国司が直々に開催したから。

国司というのは、中央政府から派遣される官吏のことで、現在の県知事とは比べ物にならないほど大きな権力を持っていました。

その力を住民に示すためには、新しく赴任した国司が大きなお祭りを開催するのは非常に有効な方法です。

そのために行ったのが「安房国司祭り」で、このお祭りは今でも安房最大のお祭りとして開催されています。

住民イベントに由来したもの

やがて時代が進み、地域の人々が同じ仕事を行わなくなり、様々な人たちがともに暮らす「都市」が生まれます。

すると、お祭りにも娯楽の要素が強くなっていきます。

また、自治体ではできるだけ多くの観光客を呼び込むための、目玉イベントとしてお祭りを行うようになりました。

館山では「南総里見まつり」がこれに当たります。

「南総里見まつり」は市民イベントからスタートしたもので、神様を祀るという意味合いはほとんどありません。

また、「南総里見まつり」の名称の「まつり」は漢字の「祭り」ではなくひらがなの表記となっていますが、これは神様に行う神事ではなく、住民のために地域を活性化するイベントであるという意味合いが込められています。

もちろん、神様のために行わない「まつり」が悪いわけではありません。

実際「南総里見まつり」は、神事ではないため、観客に喜んでもらうように様々なイベントが新たに盛り込むこともでき、現在では「安房国司祭り」に迫るほどの多くの観客や観光客を呼び込む「まつり」として成功を収めています。

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